法政大学 拠点

NIHU現代中国地域研究・法政大学拠点第4回研究会
2012年9月29日於:法政大学80年会館7階会議室
筑波大学とのジョイントワークショップ
『現代世界の市民社会・利益団体政治研究:現代中国の市民社会・利益団体』報告会

 

 今回の研究会は筑波大学とのジョイントというかたちで行われ、筑波大学から5名の専門家も参加して共同のワークショップという形で研究会が行われた。筑波大学の辻中豊氏、慶應義塾大学の小嶋華津子氏、筑波大学の黄媚氏から報告が行われた。
 まず、研究代表の辻中氏から中国の社会団体についてJIGSデータの分析の紹介が行われた。報告は14カ国について行われた世論調査の報告についての中国部分を紹介するかたちで行われた。ほぼ10年程度の期間を対象に調査が行われた。中国のパートナーからは中国の社団は日本の特殊法人と似ているのではないかという感想がでたことが紹介されたがこれは興味深い指摘であった。辻中氏によると、調査研究は、「市民社会」の概念を切り口に行われ、日本を手始めにトルコ、ロシア、フィリピン、バングラデシュ、ブラジル、ウズベキスタン、エストニア、ポーランド、インドなどのデータを集めてきた。日本は4万件近いデータ。こうした調査データの中から中国を相対化して調べる意義があるのではないかと辻中氏は指摘した。
辻中氏からJIGS、Freedom
houseのデータについて説明がされたが中国では比較的大規模な聞き取りを行い、多くの回答を得られたが人為的でないよう配慮する必要もあったという。こうしたデータによってコーポラティズム、公共性の現状を他の国と比較検討することが可能になったといえる。具体的な数を明確にすることで日本との比較も可能だ。
 次に黄媚氏から中国の社会団体について紹介された。社会団体が自主的に国家の統制を自主的に受けている傾向が指摘された。黄氏によると社会団体管理の枠組みは1989年に作られ、天安門事件後に管理を規範化することが目指された。業務管理単位と民政部の二重管理下に置かれ、2004年に広東省シンセン市で社会管理がさきがけ的に行われ、2012年7月にさらに改編された。改編のプロセスで一部「国家コーポラチィズム」の傾向が強まる部分もあった。上海や南京では政府の公共サービスを民間委託することで政府の負担を緩和し、政府は補助金を出すような制度を始めた。黄氏は制度改編が今後どのような形で全体的に変化していくのか、見ていく必要もあると指摘した。
再度、辻中氏から社会団体について説明が行われた。社会団体の種類は4分類(学術、業界、専門、聯合)あった。もともと個人会員ゼロといっている組織が少なからずあったが、会員数も増え、会員ゼロといった組織も減った。北京>浙江>黒竜江省の順で団体の財政規模が大きかった。黒竜江で面白い変化の傾向があるのではないかという指摘がされた。社会団体についてのアンケートでは年次報告の監査が減っているという数字もあり、政府の管理が緩んでいるという数字も見られたという。政府機関との関係は緊密だが、政府から重視されているという数字の現象も見られ二律背反的な状況も見られ興味深い。重視はされていないが影響力は増大しているという回答も興味深かった。
辻中氏によると社会団体の設立年を北京、浙江、黒竜江を調べるとその傾向は近似していたという。分野別では北京で科学技術、浙江は商工業、黒竜江では農業の団体が多かった。社会団体の関心事も北京と浙江、黒竜江省でそれぞれ違いが少しずつ出た。黒竜江省が政府との関係ではクールな関係を求めている。政府への満足度は浙江が建前、黒竜江省では不満が比較的に多かったという。どの省でも自己を革新的だと認識する回答者が多かった。中国では社団の政府への働き掛けは個人の全人代代表、協商委員ではなく中央政府や地方政府などの官僚機構への働き掛けが日本よりも多かった。韓国では国際機関やメデアへの働き掛けが多かったのが特徴的である。韓国は政府に近い団体とそうでない団体がはっきり分かれている。影響力の高低についての評価は中国では知識人が日本や韓国と比べ高いことが分かった。また自分たちの影響力については強いと弱いの二極分化した点が中国の特徴であったという。
 次に小嶋氏から中国の国家コーポラティスト体制についての説明がされた。小嶋氏によるよ、国家コーポラチィズムから社会コーポラチィズムへの変化が見られたという。民主化なしでも台湾のようになる、ありえない(デクソン)という議論があるが、中国の社会団体は多様であるため量的分析が必要だという。新しい社会団体ほど国家からの自立性を獲得しているか、国家から自立性を持つ団体が現存のコーポラテズム体制に不満を持つ傾向があるか、という二つのリサーチクエスチョンをもとに考えると、設立年と分野が自立性を考える時には有用であることが判明したという。新しい団体ほど会員からの要求が反映され自立性が高いことが分かった。人事面でも所管官庁からの推薦を受けていない、という回答が増えていた(49→65%に)ことからも自立性が向上しているといえるという。また新しい団体ほど政府からの財政的支援を受けていない事が分かった。86%の団体で党組織が設立されていないと回答したため党による党組織設立推進キャンペーンが功を奏しているとは言えない。既存のコーポらテスト体制への不満があるかについては、政府への依存がよくないという答えが増え、政府の大きな干渉が社団の発展の阻害要因になるという考えの人が増えた。充実した報告に対して南裕子氏、菱田雅晴氏、趙宏偉氏、阿古智子氏などから活発な疑問、意見が出された。