「研究企画統括(歴史)」 京都大学拠点 石川禎浩

中国の歴史にたいする理解なしに、現代中国を理解することはできないとは、しばしば言われるところである。とりわけ、近現代の歴史は、現代中国のさまざまな事象の直近の過去として、極めて重要である。ただし、日本の中国近現代史研究と現代中国研究との間に、充分な学的交流や知識の共有がはかられているかとなると、いささか心許ない。いくら分厚い蓄積を持つ日本の中国研究とは言っても、ディシプリンの違い(歴史学、政治学、経済学etc.)を理解した上でのそれら学問領域間の協力がなければ、中国近現代史研究も現代中国研究も、所詮は「群盲象を評す」の域を出られないであろう。

中国近現代史研究と現代中国研究は、如何にすれば協力しあえるのか。両者の接合領域である1950年代の中国を試掘してみること(今や1949年は歴史の終点ではない)、「歴史問題」を題材にして、歴史の審判者意識と中国政治の関係を研究してみること等々、実は想定されるアプローチは多い。いわゆる尖閣諸島の帰属問題が、中国においては単なる領土紛争ではなく、必ずと言ってよいほど「歴史問題」へと関連づけられるのを見る時、我々は過去から現在へ向かう歴史の堆積として現代中国を研究すると同時に、現代(当代)から意識的・遡及的に過去(歴史)を利用しようとする営為の双方向性を視野におさめなければならないことに気づかされるのである。歴史担当の研究企画統括者(企画運営委員)として、わたしは「歴史ファクター」に着目した現代中国研究を微力ながら推進し、中国近現代史研究と現代中国研究の橋渡しをしていくつもりである。