「研究企画総括(政治)」 慶應義塾大学拠点 高橋伸夫

国の国内政治およびその対外政策が今後どのようなものになるかは、いまや世界の人々の共通の話題だといってよい。というのも、それらは途方もない数の人々の運命に影響を及ぼす可能性があるからである。

だが、政治学の研究者たちは、この大国における政治の変化を知るための観測台をどの地点に設け、何を観測すべきかについて図りかねている。それどころか、現在の中国の政治体制をいかなる言葉で規定すべきかについての合意さえない。果たして、中国の一党独裁体制は、自らがその創造に手を貸した新しい社会的・経済的環境に巧みに適応しつつあり、それゆえに持続可能なのであろうか、それとも衰退あるいは解体の過程にあるのだろうか。現在、前者の可能性を強調する議論が主流となっている。私自身も、今日の中国の政治状況を語る際には、しばしば「騒々しい安定」(tumultuous stability)という言葉を使っている。だが、増大する一方の民衆の抗議運動に象徴される「騒々しさ」と「安定」との共存はいつまで続くのだろうか。チュニジアやエジプトでの政治変動は、研究者たちが、なぜこれらの国々の権威主義体制はかくも安定しているのかと論じていた際に生じたのではなかったか。

問題は、改革開放以降、研究対象としての中国が大きく変化したにもかかわらず、その巨大な変化に応じた新しい接近方法をわれわれがいまだに見出していないことにある。現在の中国は、孤立した社会主義でもなければ、閉鎖された権威主義体制でもない。それは、容易に接近可能で、大量の情報を発信し、グローバリゼーションの波にさらされている権威主義体制なのである。

われわれは巨大な変貌を遂げた中国に応じた問題設定、アプローチ、およびデータの間の適切な組み合わせを発見する必要がある。研究企画総括政治担当としては、国内外の研究者との協力をさらに進めながら、新しい角度からの中国政治の研究を推進したいと考えている。